初出場のW杯でGSを無敗突破したカーボベルデの勝負はこれから?9島12クラブが全国選手権を戦う小国の現実
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初出場のW杯でGSを無敗突破したカーボベルデの勝負はこれから?9島12クラブが全国選手権を戦う小国の現実

W杯初出場ながら、北中米大会初戦でスペインを相手にスコアレスドロー。その後もウルグアイと2-2の打ち合いを演じ、サウジアラビアと0-0で引き分け、無敗の2位で決勝トーナメント進出を決める偉業を達成。世界中の視線が、アフリカ西岸沖に浮かぶ小さな島国カーボベルデに注がれている。

元ポルトガル領のカーボベルデは、9つの有人島を主とする郡島国家である。国土面積は滋賀県とほぼ同じとなる約4033平方kmで、W杯出場国としては史上最少級。人口規模も約50~60万人とキュラソー、アイスランドに次ぐ小国だ。

しかし、その歩みは決して偶然の産物ではない。カーボベルデは欧州に広がるディアスポラの力、旧宗主国ポルトガルとの結びつき、そして地道なタレント発掘によって、W杯の舞台にたどり着いた。彼らはいかにして他大陸の強豪国とも渡り合えるチームを作り上げたのか。その歴史と強化策をたどっていく。

欧州組23人で構成される国内組0人の代表チーム

カーボベルデにサッカーが伝わったのは、ポルトガル統治下の1910年代とされる。島を訪れたポルトガル軍人や商人を通じて競技が広まり、1953年には公式の国内選手権が始まった。当初はサン・ビセンテ島とサンティアゴ島のクラブのみが参加する大会だった。

1975年に独立を果たすと、国内選手権の形式も変化した。翌年以降は、各島のクラブが全国大会に参加できる仕組みが整えられ、1982年にはカーボベルデサッカー連盟が設立されている。この代表チームが獲得した最初の大きな国際タイトルは、2000年のアミルカル・カブラル杯。西アフリカ諸国が参加する同大会で強豪国セネガルを破って優勝したことは、カーボベルデサッカー史における重要な転機となった。

そして、その歴史を塗り替えたのが北中米W杯アフリカ予選。グループDでアフリカ勢最多のW杯8回出場を誇るカメルーンを上回り、首位で本大会出場を決めた。史上初めてW杯への切符をつかんだ最終節エスワティニ戦(3-0)の後、ブビスタ監督が口にしていたのは、選手発掘の難しさについてだった。

「この代表チームは、常にタレントの発掘に取り組んでいる。サッカーに休暇はない。多少休むことがあっても、頭の中ではいつも選手や代表チームのことを考えている」

その苦労は北中米W杯メンバーにも表れている。所属クラブの国別選手数で分けると、ポルトガル勢7人、トルコ勢3人、ブルガリア勢2人、キプロス勢2人、ロシア勢2人、アメリカ勢2人、スペイン勢1人、オランダ勢1人、フィンランド勢1人、アイルランド勢1人、ハンガリー勢1人、ルーマニア勢1人、イスラエル勢1人、UAE勢1人という多種多様ぶり。26人中23人を占める欧州組を中心に構成され、国内組は1人も食い込んでいない顔ぶれとなっている。

9島の12クラブが戦う全国選手権もアマチュア色は強いまま

現在のカーボベルデ全国選手権は、欧州CLの新フォーマットに類似した形式に落ち着いている。9の有人島のうち、サンティアゴ島とサント・アンタン島のみ南北の2つに分かれた計11の地域王者に前年王者を加えた12クラブによって争われ(その前年王者が地域王者となった場合は、前年の国内準優勝チームが参加する)、各クラブはリーグフェーズで6試合(ホーム・アウェイ各3試合)を戦い、上位4チームがプレーオフへ進出。ホーム&アウェイ方式で準決勝が行われ、最後は一発勝負の決勝でカーボベルデリーグ王者が決まる。

しかし、こうして移動や滞在にかかるコストを切り詰めているように、依然としてアマチュア色は強いままで、カーボベルデ代表の北中米W杯メンバーそれぞれのキャリアを振り返っても、国内クラブを経由した選手は両手で数えられるほどしかいない。ゆえに重要性が増す世界まで網を広げた選手発掘には、スカウティングツールや連盟・クラブ間のネットワークといった一般的な手法に加え、より柔軟なアプローチも使われてきた。

象徴的なのがアイルランドで生まれ育ち、プロ生活でも同国1部のボヘミアンとシャムロック・ローバーズにしか在籍したことがないCB、ロベルト・ロペスのケースだ。彼は日本でも広く報じられているように、LinkedInを通じてカーボベルデサッカー連盟から誘いを受け、父の出身国であるカーボベルデへと代表入りした34歳。こうしたSNSの活用などは現代的でありながら、人的コネクションに頼らざるを得ない小国ならではの発掘方法とも言える。

英『BBC』によると、ロペスのように出身国とは異なる代表チームを選んだW杯登録選手の割合は、北中米大会で史上最多の23%超を占めることになったが、カーボベルデ代表は過半数(14人)が国外で生を受けている。その背景にあるのが、海外に暮らすカーボベルデ系住民、いわゆるディアスポラが国内人口の約2.5~3倍となる約150万人以上にも達するという、カーボベルデ特有の人口構造だ。

カーボベルデでは、干ばつや水不足、農業の難しさなどを背景に、多くの人々がより良い生活を求めて国外へ移住してきた歴史がある。その結果、ポルトガル、オランダ、フランス、アメリカなど各地にカーボベルデ系コミュニティが形成されている国情は、代表強化において大きなアドバンテージとなっている。欧州をはじめとする世界の育成環境で鍛えられた選手も、貴重な戦力として迎え入れることができるからだ。事実、今大会のメンバーにもポルトガル生まれが3人、オランダ生まれが6人、フランス生まれが3人、アメリカ生まれが1人いる。

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ちなみに、そんな多様な生い立ちの選手たちが代表で一丸となれている理由を語る上で、それぞれ99キャップと91キャップを刻んでいる36歳のFWライアン・メンデスと40歳のGKボジーニャの存在は欠かせないだろう。彼らとA代表活動で10年来の付き合いがある38歳のDFストピラ、32歳のMFジャミロ・モンテイロ、35歳のFWギャリー・ロドリゲスら、古参組を中心に限られた選手層の中で結束力を高め、チーム平均年齢も北中米W杯出場国中4番目に高い29.7歳と、中堅以上で脇を固めて成熟を深めてきた。

さらに、2020年1月に就任したブビスタ監督はカーボベルデ・クレオール語を、多言語軍団の共通言語に指定。2018年にあの代表勧誘を受けたロペスも当初はポルトガル語さえ理解できず、その公用語でのメッセージをスパムと勘違いしていたが、今では日常会話もこなせるほどポルトガル語系のカーボベルデ・クレオール語を上達させている。「ピッチ上で自分の位置や動きを伝えたり、味方にどう動くべきか指示したりできるようになった」と自負するように、国外出身者もピッチ内外でのコミュニケーションに溶け込ませてきた。

「モラベザ」を体現したウルグアイ戦の2-2同点劇

これまで紹介してきた数字からもわかる通り、カーボベルデとポルトガルの関係は、サッカーにおいても非常に深い。旧宗主国と旧植民地という歴史的関係性に加え、言語や移民コミュニティのつながりが、選手発掘や育成面で大きな意味を持つ。北中米W杯メンバーの所属先をあらためて見ても、最多となる7人がポルトガルクラブの一員として日常を過ごしており、2部シャベスのボジーニャや1部ベンフィカの左SBシドニー・カブラル(今夏のトルコ1部トラブゾンスポル移籍が決定済み)らは、その代表例となっている。

逆にカーボベルデにルーツを持つポルトガル代表選手も少なくない。北中米W杯メンバーで言えば、左SBヌーノ・メンデス、右SBネルソン・セメド、CBレナト・ベイガがそれに当てはまる。特にN.メンデスは今季、パリSGのCL連覇時にカーボベルデ国旗を身に纏っており、W杯決勝で祖国と対戦する夢も抱いているほど。元代表ではFWナニらの名前を挙げることもできるが、隣国や引退選手にも目を向ければ、フランスのMFパトリック・ビエラやDFパトリス・エブラも該当するなど、どちらかと言えば守備的なポジションのカーボベルデ系有名選手が多いという特徴もある。

カーボベルデとポルトガルのA代表同士の対戦も、過去に行われている。カーボベルデはポルトガル相手に通算1分2敗。中でも印象的だったのは、2010年南アフリカW杯前の壮行試合。当時FIFAランキング117位だったカーボベルデは、ポルトガルの攻撃を最後まで耐え抜き、スコアレスドローに持ち込んだ。この結果は当時ポルトガルメディアでも大きな驚きとして受け止められ、その堅守は北中米W杯アフリカ予選の全10戦中7戦無失点という成績にも表れているのはもちろん、当時から16年後のスペイン戦でも発揮されることとなった。FIFA公式データ上でも縦16m×横35mという[4-1-4-1]ローブロックの徹底したコンパクトぶりが可視化されていたが、ロペスは「僕らには勇敢さもある」と豪語する。

「試合中に粘り強く戦うことを恐れず、窮地で屈すると思わせておいて、逆に反撃に転じるような強さも兼ね備えている。僕たちは顔を上げて胸を張り、真っ向から勝負に挑むんだ」

その言葉通り、21分に先制しながら前半のうちに2-1と試合をひっくり返されたウルグアイ戦でもカーボベルデは揺らぐことなく、61分に自陣での相手スローインから生まれた一瞬の隙を突いて、同点に追いつくという堂々たる戦いぶりを披露した。その長所にはロペスいわく、カーボベルデの人々の生き方が表れているという。

「島の人々が使う『モラベザ(morabeza)』という言葉がある。『ストレスがない』という意味だけど、まさに彼らを体現している言葉だ。頭の中にどんな悩みがあろうと、私生活で何が起ころうと、彼らの『また新しい1日が始まる。何事も起こるものだ。それを乗り越えて、前に進んでいけばいい』という考え方は変わらない」

この『モラベザ』という単語は辞書的には「温かいもてなし」「人懐っこさ」「心の広さ」「思いやり」などを表し、カーボベルデ特有の人を温かく迎え入れる文化や気質を意味する。ロペスの解釈としては、温かく、おおらかに、肩の力を抜いて運命を受け止める島の精神を指しているのだろう。

ポルトガルとの連携が進む一方で課題は山積み?

ポルトガルとは制度面での連携も進んでいる。2011年には、ポルトガルサッカー連盟とカーボベルデサッカー連盟が協力協定を締結。「組織運営」「人材育成」「各年代代表チームの交流促進」という3分野で協力していくことが確認された。特に指導者・審判の育成に重点を置くとともに、年代別代表の相互交流を促進する内容となっている。

クラブレベルにおいても関係は強い。スポルティングは2016年に、FCポルトも近年、カーボベルデで公式アカデミーを展開している。世界有数の育成ノウハウを持つポルトガルの名門クラブが現地に拠点を置くことは、国内の子供や若手にとって大きな意味を持つだろう。

さらに2026年5月には、カーボベルデサッカー連盟による国際投資プロジェクトも発表された。コンソーシアムを組む10社のうち7社がポルトガル企業であり、FIFA認証基準に対応したグラウンド建設やスポーツ用品の供給などが計画されている。こうした取り組みは、国内のサッカー環境改善に向けた重要な一歩となるに違いないが、課題も少なくない。

ブビスタ監督は、カーボベルデ代表が持続的に成長するためには、国内のサッカー環境とインフラ整備が不可欠だと強調している。代表チームが国際試合を行うエスタディオ・ナシオナル・デ・カーボベルデは人工芝で、散水設備も十分ではない。指揮官は冗談交じりに、こう語った。

「カーボベルデ代表はホームよりアウェイのほうが良いサッカーをする、とよく言われる。その最大の理由は芝の状態だ。他に説明できる理由はないと思う」

移動面の負担も大きい。7セーブでマン・オブ・ザ・マッチに輝いたボジーニャがスペイン戦後に「母親がビザの問題でここに来られなかった」と涙を流したことで、ビザ申請時に支払わなければならない最大1万5000ドル‌という保証金負担の重さも話題となったが(その後に米政府の働きかけもあってボジーニャの母はウルグアイ戦、サウジアラビア戦を現地観戦できた)、代表チーム自体も周辺国と比べて小規模な予算で運営されており、その一員であっても長距離移動はエコノミークラスを余儀なくされるという。代表活動で疲労を抱え、クラブに戻った後にポジション争いで不利になる選手もいるほどだ。

そして最大の課題が、育成年代の代表活動である。カーボベルデでは大会に合わせて世代別代表が編成されることはあっても、強豪国のように安定して国際経験を積ませられているわけではない。そこからA代表までたどり着くには、まだ大きな壁がある。ブビスタ監督は、次のように警鐘を鳴らしている。

「若い選手たちが十分な環境で練習し、競い合えるよう、質の高いスポーツ施設をもっと増やさなければならない。現在、我われは育成年代の代表チームに大きな課題を抱えている。オリンピック代表、U-20代表、U-19代表が継続的に活動していないため、国内で育った若い選手がA代表までたどり着くのは非常に難しい。国内サッカーにも明確な制度やルールを整え、すべての若い選手が平等にA代表を目指せる環境を作る必要がある。カーボベルデには才能がある。しかし、才能だけでは十分ではない」

ディアスポラの力を、未来へとつなげるために

まとめると、カーボベルデ代表の躍進は、多くのディアスポラ選手に支えられている。欧州で育った選手たちを柔軟に迎え入れ、小国の限られた人材プールを世界規模に広げたことが、北中米W杯出場の大きな要因となった。

ただし、それだけに頼り続けるわけにはいかない。長距離移動、人工芝のピッチ、育成年代の活動不足、国内リーグの整備不足。こうした課題を放置すれば、代表チームの成長は一過性のブームで終わってしまう可能性もある。

今後も継続的にW杯出場を目指すためには、国内環境の整備が不可欠だ。国際基準に対応した施設の建設、世代別代表の継続的な活動、地域リーグからA代表へとつながる明確な育成ルートの構築が求められる。

ポルトガルとの結びつきは、その大きな助けになるだろう。スポルティングやFCポルトのアカデミー、ポルトガル企業による投資、そして欧州に広がるカーボベルデ系コミュニティ。これらを国内育成へと還元できるかどうかが、今後の鍵となる。

スペインを相手に守り抜いた90分間、そしてグループステージ無敗突破は、世界にカーボベルデの名前を知らしめた。しかし、本当の勝負はここからだ。小さな島国が、この歴史的快挙を一過性の奇跡で終わらせるのか、それとも持続的な成長の出発点にできるのか。カーボベルデサッカーの未来は、その選択にかかっている。