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トレセンや選抜、選ばれないとダメ?【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆さま、こんにちは!大槻です。
新年度がスタートしてひと月が経過しましたが、いかがお過ごしでしょうか? 新しい環境にも慣れてきた頃でしょうか。もちろん思っていたようなことばかりではないと思いますが、まずは目の前のことに一生懸命に取り組む姿勢だけは忘れずにいたいものですね。

さて、今回はトレセンをはじめとした選抜活動についてです。市区町村、地域のトレセンなど、選抜活動に選ばれることは名誉なことですが、子ども達の導き方を間違えてしまうとせっかくの活動も逆効果になってしまうことがあります。トレセンや選抜活動における大人の導き方について考えてみましょう。

トレセンとは?選ばれないとダメ?

お子さんがサッカーを始めたばかりの方には、「トレセンってよく聞くけど、何?」という方もいるかもしれませんね。
トレセンとは、「トレーニングセンター」の略称で、「日本サッカーの強化、発展のため、将来の日本代表選手となる優秀な素材を発掘し、良い環境、良い指導を与えること(JFAサイトより)」を目的に始められたものです。

 

ジュニア年代におけるトレセンシステムは、地区トレセン→47都道府県トレセン→9地域トレセン→ナショナルトレセンと段階が設けられており、それぞれが連携して動いています。JFAサイトにもあるように、各地域に点在している、その時点でサッカーが得意な選手を集めて一同にトレーニングをすることでお互いの刺激となるような環境を作るのがこのトレセンの目的です。

トレセン制度の整備によって優秀な選手が発掘されるようになってきたことは事実です。そういった場所に選出されることは選手にとって名誉なことだと思いますし、周囲の大人にとっても嬉しいことだと思います。
しかし、そういった感情や想いだけが独り歩きしてしまい、選手だけでなく周囲の大人も選出されること自体が目的になってしまっていることがあるように思います。常に誰かの評価を気にしてしまったり、自分勝手なプレーが多くなってしまったり、「選ばれなかったらダメなんだ…」そんな雰囲気さえも感じることがあります。

選ばれた・選ばれなかったの結果よりも…

 

トレセンや選抜活動を意識することは悪いことではありませんし、達成すべき目標を設定することは大切なことだと思います。しかし、選出されることだけに固執してしまって過程を大切に出来ないようでは、子ども達の「挑戦する気持ち」を育てることは出来ません。

我々保護者は子どもが選出されずに悔しい気持ちになるのを見たくはないものです。ですから、結果に直結しやすいような行動や努力を促すかもしれません。
「ミスしたら、落とされるよ!」「選出されなかったら、○○クラブに入れないよ!」
子ども達にそんなことを言ってはいませんか? 結果ありきの働き掛けは、それが達成されなかった時に大きな落胆を生んでしまいます。そのような働き掛けを繰り返していると、子ども達は失敗に対して必要以上に恐怖心を抱くようになってしまうでしょう。

サッカーに限らず、日常でも沢山の失敗があるかと思いますが、そうした失敗に対して『失敗=悪いこと』と子ども達が捉えてしまわないような働き掛けが必要だと思います。挑戦する気持ちを育てていくためにも、まずは子ども達への日常の働き掛けを見直してみましょう。出来なければダメではなく、少しの出来たを認めていくこと、取り組む姿勢やその過程に対して評価してあげること、そういった働き掛けの連続がチャレンジしていく勇気を育てていくのだと思います。

トレセン・選抜活動に選出されることは名誉なことですし、誇らしいことだと思います。しかし、選出されなかったらダメなのか?と言ったらそうではありません。選出されたらそこでも頑張れば良いし、選出されなくても今いる場所で頑張れば良いのです。
出来た、出来なかったという結果だけではなく、どんな時も一生懸命取り組めるか?といった『取り組む姿勢』に対する評価をしてあげられると良いですね。

トレセンや選抜に選ばれた時、忘れないでほしいこと

 

そして、トレセンや選抜に選ばれると、周囲からも注目されるようになるかと思います。でも、選出されたからといって、所属チームの中で偉くなったわけではないのです。トレセンに選ばれたからといってチームの活動がおざなりになってしまっては本末転倒です。

むしろ周囲からの見られ方が変わる分責任も大きくなるので、これまで以上にチームへの貢献を考えなければいけません。それは保護者も同様です。偉そうな振る舞いも慢心も必要ありません。子ども達がそんな素振り見せていたら、保護者はそれを正しい方に導く役割があります。トレセン・選抜活動に選ばれたからこそ、チームに良い影響を与えられる、良いお手本となる選手を目指しましょう。

結果に捉われず「挑戦する気持ち」を育てよう

 

サッカーに限らず、生きていれば良いときも悪いときもあります。成果が出ることもあれば、出ないこともあります。でもだからと言って全部ダメなのか?と言ったらそうではないはずです。
試行錯誤した過程は自分の経験になって残っていきます。だからこそ成功も失敗も経験していく必要があるのだと思います。そしてその経験を元にまた新たなチャレンジをして欲しい。サッカーを通してそういった「挑戦する気持ち」を身に付けていけるといいのではないでしょうか。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル