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リスペクトの精神が子ども達を育てる【大槻邦雄の育成年代の「?」に答えます!】

サカママ読者の皆様、こんにちは。大槻です。
熱戦が繰り広げられたワールドカップが閉幕しましたね。大会期間中は連日眠い目をこすりながらテレビに噛り付いていたという方も多いのではないでしょうか。

ワールドカップでは、プレーだけではなくチームや選手の振る舞いについても注目が集まりました。時に感情的になる場面も見られましたが、世界のトップ選手達の振る舞いに心を打たれる場面も多かったように思います。改めてスポーツの魅力を感じるとともに、チーム、選手としての在り方を考えることも多かったのではないでしょうか。
そこで今回は、忘れてはいけない「リスペクトの精神」について考えていきたいと思います。みなさんは、子ども達にどんな選手、大人に育って欲しいですか?子ども達のお手本になるような振る舞いを考えていきましょう。

サッカーに関わる全ての人にリスペクトの精神を

日本サッカー協会、Jリーグでは、2008年よりリスペクトプロジェクトを開始しました。リスペクトの精神はフェアプレーの原点でもあります。日本人が文化的に持っている相手を思いやる気持ちは、世界から賞賛されることもありますよね。そこで「フェアで強い日本を目指す」というテーマ打ち出して、そういった日本人らしさを出して戦っていくことを目標に掲げたのです。

日本のスポーツを取り巻く環境は大きく変わってきています。プロスポーツの定着と共に世界で活躍する選手も多くなってきました。スポーツ、サッカーの社会的役割が大きくなってきている中で、リスペクトの精神はその価値を高めていくことに繋がっていると思います。そしてその精神は選手だけではなく、関わる人全てに当てはまることだと思います。同じチームの仲間、対戦相手、試合をコントロールしてくれる審判、子ども達を導く指導者、チームの活動を理解し協力してくれる保護者、試合や大会を運営してくれる関係者、さらには用具や施設など……。サッカーは1人では楽しめませんし、成立もしません。そこに必要なのはお互いを思いやる気持ちであって、感謝がなければ成立しないのです

そう考えた時に、自分の振る舞いを振り返ってみて、どうでしょうか?
対戦相手は試合をする大切な仲間であって、敵ではありません。サッカーをする仲間に対して、下に見るような発言や態度は必要ないですよね。
審判のジャッジに対する発言や態度はいかかですか?抗議をする姿と戦う姿勢は違うと思います。
そして、指導者に対してはどうでしょうか?指導者も日々、勉強しています。なので、サッカーのことは指導者を信頼してお任せしてください。ただ、もし保護者の皆さんが分からないことや知りたいことがあれば、話をしてみてほしいなと思います。そして、指導者は保護者の方の疑問・質問に対しては、出し惜しみせずに必要なことをしっかりと伝えられるといいと思います。なぜなら、指導者にとっては当たり前のことでも、保護者の皆さんにとっては初めて体験することも多いからです。
最後に、試合や大会の関係者へのリスペクトを忘れないで欲しいと思います。彼らは試合がスムーズに運営されるように尽力してくれているのですから、参加者である私たちは決められたルールを守らなければいけません。

いかがでしょうか? もし、あの時の振る舞いは良くなかったなぁ……と思うことがあれば、次から改善していけばいいのです。繰り返しになりますが、サッカーは決して1人では楽しむことが出来ません。関わる人全てが気持ちよくサッカーを楽しめるように、お互いをリスペクトする精神を忘れないようにしましょう

 
人に対するリスペクトはもちろんですが、物を大切に扱うことも大事ですね。

スタッフ、選手、保護者と一体になって応援されるチームを目指そう

スマートフォンの普及、SNS等の影響もあるかもしれませんが、以前に比べると勝ち負けばかりがクローズアップされるようになってきた感じがします。大会の結果、優勝チーム、得点者、優秀選手、選抜メンバー……様々な情報が調べるとすぐに出てくるような世の中になりました。もちろん成績の良いチームには魅力を感じると思いますし、チームや選手の名前が有名になれば、本人だけでなくその保護者も誇らしい気持ちにもなるでしょう。

しかし、その誇らしい気持ちが驕りになってしまってはいけません。自信を持つことは良いことだと思いますが、それが過度な自信になってしまうと、周囲に対する振る舞いや発言が自分勝手なものになってしまうことがあります。そうなってしまったら、周囲に受け入れられることは難しいのではないでしょうか。注目が集まるチーム、選手だからこそ、周囲の見られ方も変わり、与える影響や責任が大きくなることを自覚しなければいけません。そしてそれは、チームスタッフ、選手だけではなく、関わる保護者の方々も同様です。スタッフ、選手、保護者と一体になって応援されるチームになっていけると良いですよね

 

子どもは大人の姿勢を見て学ぶ。今一度考えたい、勝ちに向かう姿勢

サッカーは勝負事ですから、勝つこともあれば負けることもあります。しかし、自分はそこにどのような姿勢で向かっていったのかが大切だと思っています。

横柄な態度のチームや、野次暴言が多いチームを相手にした時、対戦相手のチームはどう思うでしょうか?そして、会場の雰囲気はどうなっていくでしょうか?保護者が審判を行うこともあるジュニア年代では、審判のジャッジにも影響があるかもしれません。そうやって高圧的な態度で試合をコントロールすることを、勝負の駆け引きだという人もいるでしょう。しかし、私は反対です。それは決して気持ちの良いものではないからです。もし試合を行う上でマイナスに作用することが少しでもあるなら、止めなければいけないと思います。これは観戦している保護者も含めて意識してほしいポイントです。

試合に向かっていく姿勢、それはピッチ上のマネージメントだけではありません。クラブ全体、会場全体、地域をも巻き込んで応援されるチームに育てていくことが、結果的に勝利の確立を上げることに繋がるのだと思います。多くの人が関わって試合が運営されていることを理解し、子ども達を送り出す保護者、試合を指揮する指導者、ピッチに立つ選手、それぞれの想いに寄り添えるようにならなければいけません。自分はその先に勝利があるのだと思っています。だからこそ、まずは大人の姿勢、振る舞いを見直さなければなりません。なぜなら、子ども達は大人の行動や言動をよく見ているからです。サッカーが大好きではつらつとボールを追いかけている、そんな子ども達を育てていくためにも、大人である私たちの姿勢を今一度振り返ってみましょう。

スポーツ、サッカーの社会的役割が大きくなっているからこそ…

冒頭にも述べたようにスポーツ、サッカーの社会的役割が大きくなってきています。サッカーは1人では出来ません。お互いがお互いを支え合っているからこそ成立しているスポーツです。そして、それは社会も同じです。サッカーに関わる人間が率先してこのリスペクトの精神を実践して行動が出来たなら、それは大きな社会貢献にも繋がっていくと思っています。
……とスケールの大きな話になりましたが、そう言う自分は強くもないですし、嫌なことがあったら逃げたくもなりますし、目を背けたくなることもあります(笑)。ただ、そんなネガティブな感情になりかけた時こそ、真価が問われていると思います。来年もサッカーが大好きな子ども達が楽しくプレーしていけるよう、前を向いて頑張っていこうと思います!

 
いつぞやの副審をした時の写真です(笑)。いつもと違う立場を経験すると、改めて相手へのリスペクトを意識するキッカケにもなりますね。

WRITER PROFILE

大槻邦雄
大槻邦雄

1979年4月29日、東京都出身。
三菱養和SCジュニアユース~ユースを経て、国士館大学サッカー部へ進む(関東大学リーグ、インカレ、総理大臣杯などで優勝)。卒業後、横河武蔵野FCなどでプレー。選手生活と並行して国士舘大学大学院スポーツシステム研究科修士課程を修了。中学校・高等学校教諭一種免許状を持ち、サッカーをサッカーだけで切り取らずに多角的なアプローチで選手を教育し育てることに定評がある。

BLOG「サッカーのある生活...」も執筆中
★著書「クイズでスポーツがうまくなる 知ってる?サッカー

株式会社アクオレ株式会社ティー・パーソナル