今さら聞けない!? サッカールール「オフサイドディレイとウェイトアンドシー」
1993年のJリーグ開幕戦で主審を務め、審判界に多大な功績を残したレジェンド・小幡真一郎さんによるサッカールール解説シリーズ! 今回は試合観戦の際によく耳にする「オフサイドディレイ」、そして似ているけれども少し違う「ウェイトアンドシー」について解説します。
オフサイド判定を巡る2つの技術。その違いは?
最近、小・中学年代のサッカーを観戦していて、副審によるオフサイドのフラッグアップのタイミングが明らかに遅いと感じるときがあります。それは、各国のプロのサッカーリーグを熱心によくご覧になっている審判員に多く見られるように思います。そこで今回は、「オフサイドディレイとウェイトアンドシー」について触れたいと思います。

◆オフサイドディレイ (Offside Delay) とは、プロリーグや主要国際大会等の試合においてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入されている試合特有で運用されているルールです。
内容: 副審が「明らかにオフサイドだ」とわかっていても、攻撃の局面が終了する(シュートする、あるいは守備側のボールとなる)まであえて旗を上げずにプレーを続行させることです。副審は状況を判断して旗を下げたままにします。そして、攻撃の局面が終了したところ(シュートする、あるいは守備側のボールとなる)で旗を上げます。
オフサイドディレイをすることによって、もし際どいオフサイドシーンから得点となっても、VARが映像を確認して、その前にオフサイドの反則があったとすれば、VARが介入し判定を変更することができます。
オフサイドポジションにいた選手がプレーしてオフサイドになるケースは、VARの助言のみで判定を変更し、オフサイドの位置から相手の間接フリーキックで再開されます。但し、オフサイドポジションにいた選手が相手選手、ゴールキーパーのプレーにインパクトを与えていたかどうか判断する場合は、主審もオンフィールドレビュー(画面確認)する場合があります。
最近はAIが導入され、オフサイドの可能性を自動で通知されるようになり、判定の迅速化が図られています。スタジアムのスクリーンで即座に映し出すことも行われているようです。この技術により、得点に直結する場面での誤りが大幅に減少したとも言われています。
目的: 副審がオフサイドかどうか際どい場面で、誤って旗を上げてプレーを止めて攻撃のチャンスを奪うと、後からVARで確認すると「実はオフサイドでなかった」とわかってもゴールに結びつく攻撃をやり直すことができないため、プレーを続けさせます。

◆ウェイトアンドシー (Wait & See) とは、オフサイドの反則を正しく適用するための副審の技術です。
内容: 副審が、オフサイドの反則が成立することを見極めるまで待つというものです。オフサイドポジションに選手がいること自体は反則ではありません。その選手が実際にプレーに関与、たとえばボールに触れた、あるいは相手守備側の選手のプレーを妨害したり、影響を与えたならば反則となります。従って、副審はその状況を待って判断することになります。副審によっては、ウェイトしているときは、左手で持っている旗を右手に持ち換えて、オフサイドポジションに選手がいることを主審に伝えているようです。
そして、オフサイドポジションにいる選手がパスに反応して動いたけれど、相手守備側選手に触れたり、コースの邪魔をしたりせずに、後ろから走ってきたオンサイドの選手がプレーしそうであれば旗を上げず、左手に戻します。しかしもし、オフサイドポジションにいる選手が相手守備側選手に触れたり、コースの邪魔をしたりしてオフサイドの反則が成立したのであれば、そのときに旗を上げます。このような技術を使って主審に伝えている副審もいるようです。
目的: オフサイドの反則を正しく判定するためです。ただし、誤って旗を上げるのが遅い場合、たとえば、副審が主審とのアイコンタクトを待っていたり、判定を迷っていたりして旗を上げるのが遅いと、それはウェイトアンドシーとはいえず、選手のストレスやケガ、特にゴールキーパーとの接触が懸念されます。

オフサイドの判定における「オフサイドディレイ」と「ウェイトアンドシー」は、どちらも「副審がすぐに旗を上げない」点では共通していますが、その理由と目的に明確な違いがあります。選手は勝手に自分でプレーを止めないことは勿論、オフサイドにならない工夫を各自で、チームとして練習場面で実践してもらいたいです。
副審は、一瞬の細密な判断を求められるオフサイドですので、守備側の選手の位置(オフサイドライン)を意識し、ボールと攻撃側選手の位置・プレー・動きを見ておく、予測しておくことが大切です。高度な集中力と判断力が求められ、フラッグアップするタイミングも決して簡単ではありません。このことを皆さんに理解していただくと嬉しいです。
できれば、皆さんにJFA Passportにあるオフサイドクイズの動画を見て判定していただいたり、ピッチ上でオフサイドを実際に判定するようなインスタントフィードバックにチャレンジしていただきたいと願っています。